本建物は、鉄筋コンクリート造、地上6階建の共同住宅である。
架構形式はスパン方向が中空スラブと壁柱によるラーメン構造(通称ボイドラーメンという)で、その直交方向が壁柱の集合した構造である。ボイドラーメンは全ての中空スラブが梁となり、全ての壁柱と架構を形成し、地震力を負担しているので、合理的な構造である。
設計基準は、1981年以降の新耐震基準であり、耐用年限中に数度は遭遇する程度の地震(中地震、震度?程度)に対して建物の機能を保持することとし、耐用年限中に一度遭遇するかもしれない程度の地震(大地震、震度?強〜?程度)に対して建物の架構に部分的なひび割れ等の損傷が生じても、倒壊せず、人命の保護を図るとしている。
本建物は、上記の基準を十分満足していて、保有水平耐力(建物が抵抗し得る最大の水平力)が必要保有水平耐力(起こりうる大地震の時に建物に作用する水平力)を上廻っている。
基礎については、敷地内の地盤調査報告書によれば約GL−3.0m以深がN値40以上の非常に密な砂礫層と砂岩層が分布していて、支持層として十分期待できる。基礎は直接基礎とし地下の設備配管ピットとの関係で、礎版を支持層まで下げているので、沈下等の問題は生じ難く、安全である。
本建物の合理的な構造形態は、建築主と意匠設計者の理解があって実現した形態であり、又、施工者がこの構造形態を十分理解して注意深く施工したことも含めて、この建物が今回の大地震に十分抵抗できたと考えている。
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